成功するオンラインカンファレンスの開催方法と実践ポイント
近年、オンラインカンファレンス(ビジネスカンファレンス)の開催はあらゆる業界で活発になっています。特に、BtoB企業においては、リード獲得の重要なマーケティング施策の1つとして取り組まれることが多くなってきました。しかし、初めての開催には多くのステップがあり、計画的な準備が必要です。そこで本記事では、カンファレンス開催の意味から開催までの流れについてご紹介します。
1.BtoBマーケティングにおけるオンラインカンファレンスとは
1.1 オンラインカンファレンスの定義
オンラインカンファレンスとは、インターネット上での会議やセミナーのことで、登壇企業が複数社いたり、参加者が数百名以上いるような規模を指します。オフラインセミナーとは違い、参加者は特定の場所に集まることなく、どこからでもアクセスすることができます。
1.2 オンラインカンファレンスの特徴とメリット
オンラインカンファレンスの特徴は、参加者が場所の制約を受けずに参加できる点です。これにより、より日本全国・海外からの参加が可能となり、実際に展示会やオフラインカンファレンスを開催するよりもコストを削減しつつ、より多くのリードを獲得できます。
例)共催ウェビナーと比較した場合
- 共催ウェビナー
登壇企業数:2〜4社
全体の申込数:60件〜200件程度
- オンラインカンファレンス
登壇企業数:10~15社以上
全体の申込数:300件〜2000件程度 ※登壇企業数によって変動
オンラインカンファレンスは登壇企業数が多く、大規模なものだと1000件以上のリード情報を獲得することができます。広範囲にリーチできることから、認知度向上やブランディングにも非常に効果的です。
また、オフラインイベントと比較して参加者のデータが収集しやすく、スピード感のある対応も可能です。
2.オンラインカンファレンスの種類
2.1 完全オンライン型カンファレンス
・収録動画の配信
擬似ライブ配信とも呼ばれ、事前に収録した動画を参加者に配信する形式です。参加者は自分の都合に合わせて視聴できるため、柔軟性が高いのが特徴です。また、編集を加えることにより、より質の高い動画に仕上げることができます。ライブ配信に比べて時間を制限しないという主催側のメリットもあります。
・ライブ配信
Zoomやその他配信ツールを使い、リアルタイムで配信する形式です。参加者側の顔は登壇者側に見えないため、参加者の質問ハードルが下がり、ツールを通して登壇者と参加者間でコミュニケーションがしやすいと言われています。質疑応答や投票機能などツールによって様々な機能があります。
2.2 ハイブリッド型カンファレンス
ハイブリッド型カンファレンスは、オンラインとオフラインの要素を組み合わせた形式のイベントです。
メリット:
- オンラインとオフラインの両方で参加できるため、広範囲で参加者を集められる。
- 参加者は自分の都合に合わせて、オンラインまたは現地での参加を選択できる。
- 会場費や移動費などのコストを削減できる。
- オンラインツールを活用することで、参加者のデータを容易に収集・分析できる。
デメリット:
- オンラインとオフラインの両方の運営を行うため、準備と管理が複雑になる。
- オンライン配信のための技術的な問題が発生する可能性があり、トラブルシューティングが必要。
- オンライン参加者とオフライン参加者の体験に差が出る可能性がある。
3.オンラインカンファレンスの企画ステップ
3.1 目的と目標の設定方法
まず、カンファレンスの目的を明確にし、達成したい具体的な目標を設定することが重要です。目的や目標によって参加者の質や講演内容が変わるため、部署間の連携が必要なケースが多くあります。
例えば、新規リードの獲得や既存顧客との関係強化など、具体的な設定が求められます。
例)
目的:自社サービスの認知
達成したい具体的な目標:(定量)申込数、参加者数、新規リード数、SNSでのシェア数、ウェブサイトの訪問数、指名検索数など(定性)満足度、講演中の参加者の質問やコメント、アンケート回答時のコメントなど
これらの目標を設定することで、オンラインカンファレンスの成功を多角的に評価することができます。
3.2 ターゲットの明確化
ウェビナー開催時がそうであるように、オンラインカンファレンス開催においてもターゲットを明確にすることが重要です。
例えば、認知獲得・拡大を目的とする場合、どのような人々に情報を届けたいのかを具体的に定義することで、コンテンツやマーケティング戦略を効果的に設計できます。ターゲットが抱える課題やニーズを明確にすることで、適切な内容でのオンラインカンファレンス開催ができます。
ペルソナ作成の一例:
年齢、性別、職業、業界、役職、部署、事業フェーズなどを参考に作成すると良いでしょう。
3.3 テーマとコンテンツの決定
上記で決定したオンラインカンファレンスの目的やターゲットオーディエンスに応じて全体テーマを決定します。オンラインカンファレンスが乱立する中、独自性のあるコンテンツを提供することが求められますが、目的やターゲットに合わせた内容にすることで、参加者の満足度や信頼を得ることができます。
- オンラインカンファレンス全体のテーマを決定する
- 例)テーマ「新規リード獲得の方法、最新トレンド」
- そのテーマに沿ったカテゴリを検討する
- 例)広告/SNS/オウンドメディア/ホワイトペーパー/ウェビナー/など
- カテゴリに応じた登壇企業をアサインする
3.4 予算の検討と費用配分
オンラインカンファレンスを成功させるには、事前の予算契約と適切な予算配分が必要です。もちろん、お金をかけずにオンラインカンファレンスを開催することも可能ですが、オンラインカンファレンスの規模感や設定した目的に応じて検討すると良いでしょう。
- 技術面での費用:ZoomやBizibl、EventHub、ネクプロなどの配信プラットフォームの利用料
- 集客のための費用:(facebook広告などの)WEB広告費、専用ページの制作費用、その他集客施策への費用(Peatixなどの有償の集客施策)
- 人件費:スピーカーへの謝礼、資料作成費、など
- その他:参加者へのノベルティなど
3.5 リソースの確認と準備
自社のリソースと専門性を考慮し、オンラインカンファレンスの運用体制を決定しましょう。自社内のリソースだけでは運用できない場合、外注の活用も検討することが必要です。
内製化する場合
メリット:
- コスト削減:社内リソースを活用することで、外部委託にかかる費用を削減できます。
- ノウハウの蓄積:オンラインカンファレンス運営の経験を社内に蓄積でき、今後の運用に活かすことができます。
- 円滑なコミュニケーション設計:オンラインカンファレンス終了後のフォローアップがスムーズに進みます。
デメリット:
- 専門知識の不足:社内に運用の知見がない場合、質に影響が出る可能性があります。
- 負担の増加:専任担当がいることが望ましく、兼務で実施をする場合は負担がかかり、担当者の工数を圧迫する可能性があります。
外注する場合
メリット:
- 外部のプロ活用:外注先の専門知識を活用することで、質の高いイベント開催が可能です。
- 大規模イベント開催が可能:外部リソースを活用することで、通常の共催ウェビナーと比較して大規模なイベント開催が実現できます。
デメリット:
- コスト:外注には費用がかかるため、予算の管理が重要です。
どちらの方法を選ぶにしても、オンラインカンファレンスの目的や規模、社内の状況に応じて最適な準備を行いましょう。
3.6 必要なツールの選定
オンラインカンファレンスを実施するには、ツールの選定が不可欠です。多くの種類がありますが、以下のポイントを押さえると良いでしょう。
- 開催規模にあっているか
- 必要な機能は備わっているか
- 参加者が使いやすいか
開催規模にあっているか
ウェビナーを成功させるには、目的や規模に適したツールの選定が求められます。多くの参加者に対応するものや、少人数向けの開催に適したものがあります。想定される参加者数やセミナーの開催時間を基に、必要な同時接続人数や接続時間に対応できるツールを選ぶと良いでしょう。
必要な機能は備わっているか
配信ツールには主に以下のような機能が備わっています。自社に必要な機能はどれか、検討しましょう。
- Q&A機能:参加者が登壇者に大して質問できる機能です。参加者が匿名で質問することができるツールもあります。
- 投票・アンケート機能:リアルタイムで参加者の意見を収集できる投票機能や、オンラインカンファレンス終了後のアンケート収集機能がついているものもあります。
- チャット機能:参加者と登壇者とのコミュニケーションが可能なチャット機能を指します。
4.登壇者の選定とアサイン方法
4.1 適切な登壇企業、登壇者の見つけ方
登壇者の選定は、オンラインカンファレンスの集客数に影響をします。業界での知名度や専門性を持つ登壇者を選ぶことで、集客しやすくなります。
登壇企業、登壇者のアサイン方法
- 全体テーマに沿ったカテゴリ分け
オンラインカンファレンスのテーマが決定後、イベント全体の構成を考えます。
- 各カテゴリにあった企業・登壇者をアサイン
社内のつながり、お客様、あるいは、講演代行依頼をするサイト経由での依頼を行いましょう。
- 企画書・登壇依頼書の作成
登壇依頼書を作成する際に気をつけたいポイントは以下です。
テーマの説明や概要だけではなく、「なぜ御社に登壇してほしいのか」「具体的にはどんな話をしてほしいのか」「登壇するメリット」まで細かく記載をしましょう。
- 登壇企業・登壇者への依頼、打ち合わせの実施
前向きな返事をいただけた場合、具体的な講演内容の設計をするための打ち合わせを実施しましょう。
4.2 講演内容の調整と準備
登壇が決定したあとは、以下のような流れで進行すると良いでしょう。
- 提案した講演内容と先方の意向のすり合わせ
- 資料の作成
登壇資料は、登壇企業で作成いただくことをおすすめします。もちろん主催企業が資料作成しても良いのですが、話す人が資料を作成した方がその分野における専門知識やノウハウを直接反映することができるため、より信頼性の高い資料を作ることができます。また、必要に応じて迅速に内容を更新したり修正したりすることができるという点でも、登壇企業側に資料を作成いただいた方が良いでしょう。
- リハーサルの実施
オンラインカンファレンス当日までにリハーサルを実施しましょう。具体的には、当日の流れや講演内容の最終調整を行い、登壇企業の不明点を解消することが大切です。
4.3 登壇者とのコミュニケーションポイント
当日の講演内容以外にも、以下について事前にお伝えしておくことが大切です。
- 当日の台本
一言一句、セリフを決めておく必要は無いですが、マイクオンやカメラオンのタイミング、資料の切り替え箇所等事前に伝えておくと良いでしょう。
- 登壇する企業の講演資料
必須では無いですが、事前に共有しておくことで、オンラインカンファレンス全体の統一感を持たせることができます。
- 当日のサポート体制
当日にトラブルが発生した際の緊急連絡先は、事前に登壇者に共有しましょう。
5.効果的な集客方法
5.1 LP(ランディングページ)、申し込みフォームの制作
オンラインカンファレンスの集客に欠かせないのがLP(ランディングページ)、申し込みフォームの制作です。最低限、以下の項目はページに記載をしましょう。
- 開催日時
- タイトル
- 会場:オンライン開催であることを記載
- こんな方におすすめ:3〜4つ程度記載
- 参加費用
- タイムテーブルや講演内容の詳細:タイトル、登壇企業名、概要文章
- 申込フォーム
- 個人情報の取り扱いに関する同意
情報を多く記載しすぎるとランディングページが長くなってしまい、離脱の原因となります。ページの構成を工夫すると共に、申し込みフォームは簡潔で使いやすいものに設計することで、離脱を防ぐこともできます。
5.2 適切な媒体選定と告知
様々な媒体があるため、オンラインカンファレンスの目的やターゲットに応じて使い分けることが必要です。
- SNS
- メールマーケティング(メルマガ)
- プレスリリース
- WEB広告
また、告知タイミングについてですが、オンラインカンファレンスのLPが完成次第、早めに告知を開始してください。通常の共催ウェビナーだと開催日の1ヵ月前から告知を開始することが多いのですが、数百名規模、またはそれ以上のオンラインカンファレンスの場合は、より多くの方に申し込みいただくためにも、開催日の2ヶ月以上前から告知を開始すると良いでしょう。
また、告知の準備をするタイミングで、あわせてリマインダーの設定もしておくことをおすすめします。
- 直前のリマインダー:開催の1週間前にリマインダーを送信します。これにより忘れていった参加者に再度思い出させることができます。
- 当日のリマインダー:当日の朝や開催時間、数時間前などに最終のリマインダーを送信し参加を促します。
開催前のリマインダー送信の有無で当日の参加率が大きく変わりますので、ぜひ忘れずに送信するようにしてください。イベント配信ツールでは自動的にリマインドメールが送られるような設定もできますので、ぜひ調べてみてください。
5.3 登壇企業のSNSやハウスリストへの告知
登壇企業にも集客を依頼する場合は、主催企業側から登壇企業の持つハウスリストへのメールや登壇者の運用するSNSでの投稿、拡散を促すことが大切です。
登壇企業に集客を依頼する場合の具体的な方法と工夫についてご紹介します。
1)明確な目標を設定し、密なコミュニケーションを取る
集客目標を事前に共有し、LP公開から開催当日までの間、定期的に集客数の報告を行いましょう。こまめに状況を共有し登壇企業と密なコミュニケーションを取ることで、同じ目標に向かって目線を合わせながら、集客施策をさらに加速することができます。この点においては、主催者側の積極的な姿勢や関係構築力が求められます。
2)素材の提供をする
登壇企業がSNSやハウスリストで告知を行う際に、使いやすい素材を提供することも一つのポイントです。例えば、バナー画像、投稿文のテンプレート、ハッシュタグなどを用意しておくと、登壇企業は手間をかけずに告知を行えます。これにより、告知の頻度が高まり、集客効果が向上します。
3)インセンティブ(ノルマ)の用意をする
一定数以上の集客に協力してくれた登壇企業に対して、インセンティブを提供することも効果的です。例えば、集客数に応じてリード提供数が変わる、という施策も増えていますが、こういった取り組みは登壇企業のモチベーションを高め、積極的に集客施策を実施していただくことに繋がります。
また、複数社で集客を行う場合は、どの企業からどれだけの集客があったかを把握するために、パラメータを付与したURLを使用しましょう。「URL生成ツール」と検索すると、パラメータ付きのURLを生成できるサイトが見つかります。ぜひご覧ください。
6.当日の運営とフォローアップ
6.1 リハーサル、配信環境テストの実施
当日のトラブルを未然に防ぎスムーズな運営をするためには、事前の準備が必要です。具体的にリハーサルで確認すべき項目について詳しく説明します。
- 全体の流れ:
カンファレンス当日の開始から終了までの全体のタイムスケジュールを事前に共有しておきましょう。これにより発表の流れをスムーズにすることができます。
- 登壇者の練習:
全てを話していただく必要はありませんが、実際に登壇者に発表内容を話してもらい、時間の配分やスライドの切り替えについて確認をします。特にイベント参加に慣れていない登壇者の場合は、話し方やマイク音声の質などの調整が必要です。また、講演中に動画を再生する場合、その動画がきちんと音声付きで流れるかどうかも確認しましょう。
- 技術的な確認:
参加者が視聴する画面の見え方を、事前に確認しておきましょう。特にあらかじめ収録した動画を流す擬似ライブ配信の場合は、動画が正常に再生されるかどうか、しっかり事前にチェックしておきましょう。その他、非表示にするべきボタンはないか、またアンケートなど適切なボタンが表れているかなども確認しましょう。
6.2 アンケートとフィードバックの活用、営業への連携
カンファレンス終了後、参加者からのフィードバックを収集し、今後の改善に活かすことが大切です。アンケートを通じて、参加者の満足度や改善点を把握し、次回のイベントに反映させましょう。
また、オンラインカンファレンスで獲得したリードに対するアプローチ方法については、事前に営業部門と連携を済ませておくことで、当日以降で無駄のないフォローアップをすることができます。オンラインカンファレンス終了後、1週間から2週間以内を目処に、獲得したリードに対する商談状況のヒアリングを行い、定量的な面だけではなく、定性面でのフィードバックを営業部門からもらうことも重要です。
7.まとめ(オンラインカンファレンスの成功の秘訣)
オンラインカンファレンスの成功には、細かな計画策定と準備が不可欠です。目的と目標の設定、ターゲットの明確化、適切なツールの選定、登壇者への声かけ、そして効果的な集客施策、他部署との連携など、各ステップを丁寧に実行することで、成功に近づけることができます。また外部のプロフェッショナルの支援を受けることで、自社のリソースだけでは難しい部分をサポートしてもらうことができ、より質の高いオンラインカンファレンスの開催が可能になります。