ABMとは?成果につながる戦略設計と実践方法をわかりやすく解説
ABMとは、特定の企業を対象に営業とマーケティングが連携してアプローチするBtoBマーケティング戦略です。従来のリード獲得型の手法とは異なり、受注につながる企業にリソースを集中することで、商談化率や受注率の向上を目指します。
本記事では、ABMの基本的な考え方から具体的な戦略設計、実践方法までを体系的に解説します。見込み顧客を広く集めるだけでは成果につながりにくい現在のBtoB環境において、なぜABMが有効なのか、その理由と実務に落とし込むポイントまで整理します。
ABM(アカウントベースドマーケティング)とは

ABM(Account Based Marketing)とは、特定の企業を対象に営業とマーケティングが連携してアプローチするBtoBマーケティング戦略です。従来のように幅広く見込み顧客を集めるのではなく、あらかじめ重要顧客となり得る企業を特定し、その企業に対して最適化された施策を設計・実行する点に特徴があります。
近年のBtoBマーケティングでは、リード数自体は増加しているものの、商談や受注につながらないケースが増えています。これは、情報収集手段の多様化により、興味関心の浅い段階のリードも多く獲得されるようになったためです。その結果、営業部門では優先度の低いリード対応に時間を取られ、本来注力すべき顧客へのアプローチが後回しになるという課題が生じています。
ABMはこうした課題に対して、最初からターゲット企業を定めることで解決を図るアプローチです。限られたリソースを受注確度の高い企業に集中させることで、営業効率と成果の両方を高めることができます。また、マーケティングと営業が同一のターゲットに対して連携することで、一貫した顧客体験を提供できる点も大きな特徴です。
ABMの定義
ABMは「Account Based Marketing」の略であり、企業単位でマーケティング活動を行う戦略です。従来のリードベースの考え方では、個人単位での興味関心を起点にアプローチを行っていましたが、BtoBにおいては最終的な意思決定は企業単位で行われます。そのため、個人単位の最適化だけでは受注にはつながりにくいという構造的な課題があります。
ABMでは、まずターゲットとなる企業を定義し、その企業に属する複数の意思決定関係者に対して段階的にアプローチを行います。たとえば、現場担当者には業務効率化のメリットを、マネージャー層には組織改善の効果を、経営層には投資対効果を訴求するなど、それぞれの役割に応じた情報提供を設計します。
また、ABMでは営業とマーケティングの分断を解消し、同一のターゲット企業に対して連携して施策を実行します。マーケティングが関心を醸成し、営業が具体提案へとつなげることで、無駄のない商談創出プロセスを構築することが可能になります。
従来のリード型マーケティングとの違い
従来のリード型マーケティングは、広告やコンテンツを活用して広く見込み顧客を集め、その中から有望なリードを選別して営業へ引き渡す手法です。この方法は短期間で母数を増やすことには適していますが、受注確度の低いリードも多く含まれるため、営業効率の低下を招くリスクがあります。
一方、ABMでは最初にターゲット企業を明確に定義し、その企業に対して集中的にアプローチを行います。これにより、営業活動の無駄を削減し、限られたリソースを最大限活用することができます。また、マーケティング施策もターゲット企業に最適化されるため、メッセージの精度が高まり、商談化の確率も向上します。
さらに、評価指標も大きく異なります。リード型ではリード数やコンバージョン数が重視されるのに対し、ABMでは商談数や受注率、パイプラインといった売上に直結する指標が中心となります。この違いにより、マーケティングの役割そのものがより事業成果に近づくことになります。
| 項目 | リード型マーケティング | ABM |
|---|---|---|
| ターゲット設定 | 広く見込み顧客を集客 | 事前に企業を特定 |
| アプローチ方法 | マス向け施策中心 | 企業ごとに最適化 |
| 主体 | マーケティング中心 | 営業とマーケの連携 |
| KPI | リード数 | 商談・受注・売上 |
このように、ABMは「誰に売るか」を起点に設計される戦略であり、従来のマーケティングとは根本的な思想が異なります。
ABMが注目されている理由
ABMが注目されている背景には、BtoBマーケティングの構造変化があります。まず、デジタル施策の普及によりリード獲得のハードルが下がり、量の確保は容易になりました。しかしその一方で、商談や受注につながる質の高いリードの割合が低下し、営業活動の非効率化が課題となっています。また、BtoB商材では意思決定に複数の関係者が関与するため、単一のリードだけでは受注に至らないケースが一般的です。企業単位で関係構築を行い、複数の意思決定者に対して適切なタイミングでアプローチする必要があります。ABMはこのような意思決定構造に適した戦略として有効です。
さらに、高単価商材においては、すべての見込み顧客に同じリソースを投下するよりも、受注確度の高い企業に集中した方が投資対効果が高くなります。ABMは限られたリソースを最大化するための戦略としても評価されています。
加えて、テクノロジーの進化もABMの普及を後押ししています。近年では、マーケティングオートメーション(MA)や営業支援(SFA)ツールがSaaSとして普及し、API連携によってデータを統合できるようになりました。これにより、Web上の行動履歴と商談・受注情報を企業単位で一元管理し、分析・施策設計に活用することが可能になっています。こうした技術基盤の進化が、ABMを実務として成立させる大きな要因となっています。
ABMのメリットとデメリット
ABMは、特定の企業に対してリソースを集中させることで成果を最大化する戦略ですが、その分、設計や運用の難易度も高くなります。従来のリード獲得型マーケティングとは異なり「誰にアプローチするか」を起点にすべての施策を設計する必要があるため、メリットだけでなくデメリットも正しく理解したうえで導入を検討することが重要です。ここでは、ABMのメリットとデメリットを整理し、それぞれが実務にどのような影響を与えるのかを解説します。
ABMのメリット
ABMは、受注確度の高い企業に絞ってアプローチできる点が特徴で、営業効率や成果の質を高めやすい手法です。特に高単価商材やエンタープライズ向けの営業において、大きな効果を発揮します。
受注確度の高い企業にリソースを集中できる
ABMの最大のメリットは、受注につながる可能性が高い企業に対してリソースを集中できる点にあります。従来のリード型マーケティングでは、幅広く見込み顧客を集めたうえで有望な顧客を選別する必要がありましたが、ABMでは最初からターゲット企業を定めるため、無駄なアプローチを削減できます。特に高単価商材やエンタープライズ向けのサービスでは、限られたリソースを集中させることで営業効率の向上が期待できます。
営業とマーケティングの連携強化が図れる
ABMでは、営業とマーケティングが同じターゲット企業を追うため、部門間の連携が強化されます。従来のように「マーケはリード数」「営業は受注」といった分断構造ではなく、共通の目標に基づいて動くことで、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
商談の質・LTV向上につながる
ターゲット企業ごとに最適化された提案ができる点も大きなメリットです。業界やビジネスモデル、課題を深く理解したうえでアプローチすることで「自社に最適な提案」として認識されやすくなります。結果として商談の質が向上し、アップセルやクロスセルを含めたLTVの向上にも寄与します。
ABMのデメリット
一方で、ABMはターゲット企業を絞り込む分、設計や運用における負荷が高くなりやすい手法でもあります。導入にあたっては、体制やリソースを踏まえた設計が重要です。
ターゲット選定・リサーチに工数がかかる
ABMでは、精度の高いターゲット企業の選定が成果を大きく左右します。そのため、過去の受注データの分析や市場調査、業界構造の理解など、事前のリサーチに多くの工数が必要になります。特に「どの企業が受注につながりやすいか」を見極めるには、単なる属性情報だけでなく、導入背景や意思決定プロセスまで踏み込んだ分析が求められます。初期設計の精度が低いと、その後の施策全体の効率が下がってしまう点にも注意が必要です。
組織連携が前提で、体制が整っていないと機能しない
ABMは営業とマーケティングの連携を前提とした手法であるため、部門間の認識が揃っていない場合は効果を発揮しづらくなります。ターゲット企業やKPIの定義がズレていると、それぞれが別の方向に施策を進めてしまい、結果として非効率な運用になってしまいます。共通KPIの設計や定期的な情報共有の仕組みがない場合、リード獲得や商談化のプロセスが分断され、ABMの強みである一貫したアプローチが実現できません。
運用負荷が高くなりやすい
ABMでは企業ごとにアプローチやコンテンツを最適化する必要があるため、従来のマス向け施策と比べて運用負荷が高くなりやすい傾向があります。たとえば、企業ごとに異なる提案資料の作成や、個別のコミュニケーション設計など、対応すべき業務が増加します。リソースが限られている場合は、すべてのターゲットに同じレベルで対応しようとすると負担が大きくなり、結果的に施策の質が低下するリスクもあります。優先順位を明確にした運用設計が重要です。
短期的な成果が出にくい
ABMは関係構築を前提とした戦略であるため、リード獲得型の施策と比べて成果が出るまでに時間がかかる傾向があります。特にエンタープライズ領域では、意思決定プロセスが長期化しやすく、すぐに受注につながるケースは多くありません。そのため、短期的なKPIのみで評価してしまうと、施策の本来の価値を見誤る可能性があります。中長期的な視点での評価指標を設計し、段階的な成果を追うことが重要です。
ABMが向いている企業
ABMはすべての企業に適したマーケティング手法ではなく、商材特性や営業体制によって成果の出やすさが大きく変わります。そのため、導入を検討する際には「自社がABMに適しているか」を見極めることが重要です。
高単価BtoB商材を扱っている企業
ABMは「特定の企業にリソースを集中する戦略」であるため、広く見込み顧客を集めることで成果が出るビジネスモデルとは相性がよくありません。一方で、ターゲット企業を明確に定義できる企業や、1社あたりの受注価値が高いビジネスでは大きな効果を発揮します。
代表的なのは、高単価のBtoB商材を扱っている企業です。単価が高いほど、1件の受注が売上に与えるインパクトが大きくなります。そのため、広くリードを集めるよりも、受注確度の高い企業に対して深くアプローチする方が効率的です。さらに、SaaS、ITサービス、コンサルティング、製造業の大型案件などは、意思決定プロセスが長く関係者も多いため、ABMとの親和性が高い領域といえます。このような商材では、企業ごとの課題に合わせた提案を行うことで、競合との差別化もしやすくなります。
ターゲット企業を明確に定義できる企業
次に、ターゲット企業が明確に定義できる企業もABMに向いています。たとえば、特定の業界に強みを持っている場合や、一定の企業規模・課題を持つ企業に対して高い提供価値を発揮できる場合です。
過去の受注データを分析すると「受注につながりやすい企業の共通点」が見えてきます。業界、企業規模、売上規模、導入背景などを整理することで、自社にとっての優良顧客像を定義することができます。このようにターゲットが明確であればあるほど、ABMの精度は高まり、成果につながりやすくなります。
営業・マーケティングの連携体制が整っている企業
営業とマーケティングの連携体制が整っている企業も重要な条件となります。ABMは両部門が同じターゲット企業を追い、役割を分担しながら進めることが前提となるため、部門間の連携が機能していなければ成果は出づらくなります。
マーケティングがターゲット企業に対して認知や関心を高め、インサイドセールスが接点を作り、フィールドセールスが提案を行うといった一連の流れが設計されているかが重要です。また、共通KPIが設定されていない場合、各部門が異なる指標を追ってしまい、ABMの効果が分散してしまうため注意が必要です。
エンタープライズ企業・重要顧客を攻略したい企業
エンタープライズ企業や重要顧客の攻略を目的としている場合にも、ABMは有効な戦略です。これらの企業は意思決定に関与する人数が多く、導入までのプロセスも複雑で長期化しやすいため、個人単位のアプローチでは十分に対応できません。ABMでは、企業単位で関係構築を行い、複数の意思決定者に対して段階的にアプローチすることができます。初期段階では課題認識を促し、中盤では具体的な解決策を提示し、最終段階では投資判断を支援する情報を提供するなど、プロセス全体を設計できる点が強みです。
このように、ABMが向いている企業は「誰に売るか」が明確であり、かつその企業に対して深い価値提供ができる企業です。単にリード数を増やすことを目的とするのではなく、受注につながる企業との関係構築を重視する場合において、ABMは非常に有効な戦略となります。
ABMを成功させる基本設計
ABMは単なる施策ではなく、ターゲット企業に対する戦略そのものです。そのため、初期設計の精度がそのまま成果に直結します。ここでは、特に重要な3つの基本設計を紹介します。
ABMのターゲットアカウント選定
ABMにおいて最も重要なプロセスが、ターゲットアカウントの選定です。ターゲット設計の精度が低いと、その後の施策がどれだけ優れていても成果にはつながりません。まずは過去の売上データや受注実績をもとに、自社にとって「受注につながりやすい企業」の特徴を整理します。
業界、企業規模、売上規模、導入背景、課題などを分析することで、優良顧客の共通点を明確にすることができます。そのうえで、営業部門の知見も取り入れながら、実際にアプローチすべき企業をリスト化していきます。マーケティング視点だけで選定すると現場との乖離が生まれやすいため、営業と共同で優先順位を設計することが重要です。
また、ターゲット企業の数を広げすぎないことも重要です。ABMはリソースを集中する戦略であるため、最初は絞り込んだ状態で運用し、成果を見ながら段階的に拡張する方が効果的です。
企業属性からターゲット企業を整理する
ターゲット企業を選定する際には、まず企業属性の観点から整理を行います。自社商材と相性のよい業界や企業規模を明確にし、どの市場に注力すべきかを定義します。
例えば、特定の業界での導入実績が多い場合は、その業界に絞ることで提案の再現性を高めることができます。また、企業規模によって課題や意思決定プロセスが大きく異なるため、従業員数や売上規模も重要な判断軸となります。さらに、地域や市場特性を踏まえることで、より現実的なターゲット設計が可能になります。既存顧客の傾向を分析し、共通点を抽出することで、ターゲット選定の精度を高めることができます。
加えて、企業単位だけでなく「人物属性」の整理も重要です。同じ企業であっても、意思決定に関わる担当者の役職やミッション、抱えている課題によって、響くアプローチは大きく異なります。
例えば、マーケティング責任者であればリード獲得やKPI達成への関心が高く、現場担当者であれば業務効率や運用負荷の軽減に関心を持つ傾向があります。また、情報収集の方法や意思決定への関与度も異なるため、役職・職種・課題・情報収集行動といった観点で整理することが重要です。
このように「企業属性×人物属性」の両軸でターゲットを設計することで、より精度の高いABM施策を実行できるようになります。
購買可能性から優先アカウントを見極める
企業属性だけでなく「購買可能性」という観点も重要です。どれだけ理想的な企業であっても、課題が顕在化していなければ短期的な成果にはつながりません。
そのため、課題の顕在度や導入タイミング、投資状況などをリサーチし、優先度を判断します。たとえば、すでに類似ツールを導入している企業や、業界的に変革が求められている企業は、比較的ニーズが顕在化している傾向があります。また、競合製品の利用状況なども判断材料に加えることで、より実務的な優先順位設計が可能になります。
ターゲット企業の意思決定構造の整理
ABMでは企業単位でアプローチを行うため、意思決定構造の把握が不可欠です。BtoBの購買プロセスでは複数の関係者が関与するため、それぞれの役割や関心ポイントを整理する必要があります。
現場担当者、マネージャー、経営層など、役職ごとに重視するポイントは異なります。そのため、それぞれに最適化した情報提供を設計することで、意思決定をスムーズに進めることができます。
営業とマーケティングの連携設計
ABMを成功させるためには、営業とマーケティングの連携が不可欠です。両部門が同じターゲット企業を追い、役割を分担しながら一貫したアプローチを行う必要があります。まず、ターゲット企業リストを共有し、優先度について共通認識を持つことが重要です。そのうえで、マーケティングは認知や関心を高め、営業は提案やクロージングを担うなど、役割を明確に分担します。さらに、共通KPIとしてターゲット企業接触数や商談化率などを設定し、定期的に成果を確認することで、継続的な改善が可能になります。
ABMの具体的な実施方法
ABMは戦略設計だけでなく、実際の施策としてどのように実行するかが成果を大きく左右します。ターゲット企業を定義しただけでは成果にはつながらず、その企業に対して適切な接点を設計し、段階的に関係性を深めていくことが重要です。ここでは、ABMを実行するための具体的なステップについて解説します。
ターゲット企業リストの作成
ABMの実行は、ターゲット企業リストの作成から始まります。ここで重要なのは、単なる企業リストではなく「受注につながる可能性が高い企業」を明確に定義することです。過去の売上データや受注実績をもとに、どのような企業が自社にとって優良顧客となっているのかを分析します。業界、企業規模、売上規模、導入背景、課題などの観点から整理することで、共通する特徴を抽出することができます。
例えば、特定の業界での受注率が高い場合はその業界を優先する、一定以上の企業規模でないと導入が進まない場合はその条件を満たす企業に絞るなど、具体的な基準を設けることが重要です。また、営業チームと連携し、実際にアプローチ可能な企業かどうかも考慮しながらリストを作成する必要があります。理想だけでなく現実的な営業活動に落とし込めるかどうかが、実行フェーズでは重要になります。
企業ごとのアプローチ戦略設計
ABMの成果を最大化するには、ターゲット企業について「どれだけの情報を、どの程度の質で持っているか」を整理し、状況に最適化されたコミュニケーションを設計することが不可欠です。情報の取得段階に応じて、以下の4ステップでアプローチを使い分けます。
- 企業情報のみ(白地の状態):接点創出フェーズ
ターゲット企業の基本属性のみを把握している段階です。まずはアプローチ対象を広げるための「リスト作成」と「接点づくり」に注力します。
主な施策: 展示会、Web広告、外部データベースの活用など。
- 担当者情報や一部の接点あり:関係構築・仮説検証フェーズ
具体的な担当者が判明し、わずかながら接点が生まれている段階です。SNSやメール、インサイドセールスを通じた接触を図り、信頼関係の構築とともに、相手の抱える課題の仮説検証を進めます。
主な施策: SNS(LinkedIn等)での繋がり、個別メール、電話によるヒアリング。
- 個人情報を取得済み(未商談):ナーチャリングフェーズ
連絡先は把握しているものの、具体的な検討には至っていない段階です。関心テーマに合わせた情報提供を行い、潜在的なニーズを掘り起こしながら検討意欲を段階的に高めます。
主な施策: ターゲット企業の課題に即したメール配信、限定コンテンツ(ホワイトペーパー等)の提供。
- すでに関係性が構築済み:商談化・受注フェーズ
定期的なコミュニケーションが発生している深い接点がある段階です。1to1の密なコミュニケーションを通じて具体的な課題を深掘りし、受注に向けた具体的な提案へとつなげます。
主な施策: 個別提案書の作成、クローズドな勉強会の実施、対面・Web商談。
ABMにおいては、目先のアポイント獲得だけを急ぐのではなく、情報の解像度に合わせて「接点創出 → 関係構築 → 課題把握 → 商談化」と中長期的な視点で設計することが、最終的な受注率向上への近道となります。
パーソナライズされたコンテンツ設計
ABMでは、ターゲット企業や業界に合わせたコンテンツ設計が不可欠です。一般的なコンテンツではなく「その企業にとって価値のある情報」を提供することで、関心度を高めることができます。具体的には、業界特有の課題にフォーカスしたホワイトペーパーや、類似企業の成功事例、導入効果を具体的に示した資料などが有効です。これらのコンテンツは、検討フェーズに応じて使い分ける必要があります。
例えば、初期段階では課題認識を促す情報提供、中盤では具体的な解決策の提示、最終段階では導入効果や実績の提示といったように、段階ごとに最適なコンテンツを設計します。また、単にコンテンツを用意するだけでなく、誰に対してどのタイミングで届けるかまで設計することで、より高い効果を発揮します。
マルチチャネルでのアプローチ
ABMでは、単一のチャネルに依存するのではなく、複数のチャネルを組み合わせたアプローチが重要です。メール、SNS、広告、インサイドセールスなどを連携させることで、ターゲット企業との接点を増やし、関係性を深めることができます。例えば、広告で認知を獲得し、コンテンツで関心を高め、その後インサイドセールスで接触するという流れを設計することで、一貫した顧客体験を提供できます。
また、接点は一度きりではなく、継続的に設計することが重要です。定期的な情報提供やフォローアップを行うことで、企業内での認知を広げ、意思決定に関与する複数の関係者へのアプローチを実現できます。このように、ABMの実施方法は単なる施策の集合ではなく「企業単位での接点設計」として捉えることが重要です。ターゲット企業との関係構築を継続的に行うことで、最終的な商談創出と受注につなげることが可能になります。
ABMを実行するための主な施策
ABMは戦略設計だけで完結するものではなく、具体的な施策を通じてターゲット企業との接点を構築し、関係性を深めていくことで初めて成果につながります。そのため、どの施策をどの順序で組み合わせるかが重要になります。特にABMでは、単一の施策に依存するのではなく、複数のチャネルを横断しながら一貫した体験を設計することが求められます。ここでは、ABMを実行するうえで中心となる代表的な施策について解説します。
コンテンツマーケティング
ABMにおけるコンテンツマーケティングは、単なるリード獲得ではなく、ターゲット企業との関係構築を目的とした施策です。企業や業界ごとの課題に合わせた記事、ホワイトペーパー、事例資料などを提供することで、信頼を獲得しやすくなります。BtoBでは意思決定に複数の関係者が関与するため、社内共有されやすいコンテンツ設計が重要です。初期段階では課題認識を促す情報、中盤では具体的な解決策、最終段階では導入効果や実績を提示するなど、検討フェーズに応じた設計を行うことで、意思決定をスムーズに進めることができます。
インサイドセールスによるアプローチ
インサイドセールスは、ターゲット企業との直接的な接点を生み出す役割を担います。ABMでは事前に企業情報を整理したうえでアプローチを行うため、より精度の高いコミュニケーションが可能になります。企業の事業内容や直近の動向を踏まえた仮説をもとにヒアリングを行うことで、相手の関心を引きやすくなり、商談につながりやすくなります。また、コンテンツ閲覧や資料ダウンロードといった行動履歴と連携することで、関心度の高いタイミングでの接触も実現できます。
ウェビナーやイベント施策
ウェビナーやイベントは、ターゲット企業との接点を一度に創出できる有効な施策です。特定の業界や課題に特化したテーマで開催することで、関心度の高い企業を集めやすくなります。ABMでは単なる集客ではなく、ターゲット企業との関係構築の場として設計することが重要です。参加企業の属性に応じたテーマ設定や個別招待を行うことで、より精度の高い接点を創出できます。また、開催後のフォローアップも重要です。アンケートや個別連絡を通じて関心度を把握し、適切なタイミングで営業につなげることで、商談化率の向上が期待できます。
広告やSNSを活用したターゲットアプローチ
広告やSNSは、ターゲット企業への認知を高めるための重要な施策です。ABMではマス向けではなく、業界や役職、企業規模などでセグメントした配信設計を行うことで、効率的に接触機会を増やすことができます。また、SNSを活用することで、企業担当者との間接的な接点を増やすことも可能です。コンテンツ発信やエンゲージメントを通じて関係性を構築し、営業活動を後押しする役割を果たします。
ABMの施策は単独で機能するものではなく、相互に連携することで効果を最大化します。コンテンツで関心を高め、広告で認知を広げ、インサイドセールスで接点を作り、イベントで関係を深めるといった一貫した設計が重要です。
ABMのKPI設計と成果測定
ABMでは、従来のリード数中心のKPIではなく「ターゲット企業単位」で成果を評価することが重要です。単に接触数や資料ダウンロード数を追うのではなく、最終的な受注につながるプロセス全体を可視化し、各フェーズでの改善を行う必要があります。ここでは、ABM施策の主なKPI指標を紹介します。
ターゲット企業接触数
ターゲット企業接触数は、ABMにおける最も基本的な指標のひとつです。どれだけのターゲット企業に対して接点を持てているかを把握することで、施策の実行量を可視化できます。ABMではターゲット企業を限定しているため、単純なリード数ではなく「ターゲット企業のうち何社に接触できているか」が重要になります。例えば、設定したターゲット企業100社のうち何社と接点を持てているかを継続的に確認することで、アプローチの網羅性を判断できます。
また、接触の質も重要です。広告接触やサイト訪問だけでなく、コンテンツ閲覧、資料ダウンロード、イベント参加、インサイドセールス接触など、複数の接点が積み上がっているかを確認することで、関係性の深まりを評価できます。
商談化率
商談化率は、ターゲット企業との接触がどれだけ商談につながっているかを示す指標です。ABMにおいては特に重要で、施策の質を評価する中心指標となります。接触数が多くても商談につながらない場合、ターゲット設定やメッセージ設計、アプローチ方法に課題がある可能性があります。一方で、接触数が少なくても商談化率が高い場合は、ターゲット精度や施策の方向性が適切であると判断できます。
さらに、チャネル別に商談化率を分析することで、どの施策が商談創出に寄与しているかを把握できます。例えば以下のように分解して分析します。
- ウェビナー経由
- インサイドセールス経由
- 広告接触経由
これにより、どの施策にリソースを集中すべきかを判断できるようになります。
受注率・LTV
受注率とLTV(顧客生涯価値)は、ABMの最終的な成果を評価する指標です。どれだけの商談が受注につながっているか、また1社あたりの売上がどの程度拡大しているかを確認することで、投資対効果を判断できます。ABMでは企業単位で関係構築を行うため、単発の受注だけでなく、継続的な取引やアップセル・クロスセルの可能性も重要になります。そのため、LTVの観点で評価することで、より正確に成果を測定できます。
受注率が低い場合は、商談の質や提案内容、意思決定者へのアプローチに課題がある可能性があります。接触から受注までの各プロセスを一貫して見直し、ボトルネックを特定して改善していくことが重要です。
ABMの成功事例
ABMは理論だけでなく、実際の運用においても成果につながっている事例が多く存在します。特にターゲット企業の選定精度や営業とマーケティングの連携体制を見直すことで、商談化率や受注率の改善につながるケースが多く見られます。
ここでは、ABMの考え方を取り入れることで成果につながった代表的な事例を紹介します。
ABM導入で商談化率が向上した事例
インサイドセールス(SDR・BDR)の体制を見直し、ターゲット企業ごとのアプローチに切り替えることで、商談創出および受注につながった事例があります。

本事例では、従来はリード獲得数を重視したマーケティング施策を中心に展開していたものの、アポイントは獲得できても受注につながらないケースが多く、営業の対応負荷が高いという課題を抱えていました。
そこで、過去の受注データをもとにターゲット企業の再定義を実施し、企業単位でのアプローチへと転換しました。あわせて、インサイドセールスによるアプローチ内容も見直し、仮説ベースでのヒアリングや提案精度の向上を図りました。その結果、着席率91%以上・提案化率40%以上を実現し、2ヶ月で受注創出につながっています。
このようにABMでは、単にリード数を増やすのではなく、ターゲット企業を明確にしたうえで適切なアプローチを行うことで、商談の質と受注確度の向上が期待できます。また、ターゲット企業の優先順位を見直し、インサイドセールスの役割を最適化することで、アポイント数の増加だけでなく、投資対効果の改善にもつながる点が特徴です。
他にもターゲット企業の優先順位を再設計し、インサイドセールスによるアプローチを最適化したことで、アポイント獲得数の増加や投資対効果の改善につながった事例も報告されています。
営業とマーケの連携で受注率が改善した事例
営業リソース不足の課題に対し、ターゲット企業の見直しとアプローチ設計を再構築することで、アポイント創出数が大きく改善した事例があります。

本事例では、従来はSDR施策が中心であったものの、BDRに割ける社内リソースが不足しており、新規ターゲットの開拓やアプローチの最適化が十分に行えていない状況でした。そこで、ABMの考え方をもとにターゲット企業の選定と優先順位の見直しを実施し、インサイドセールス(BDR)のアプローチを再設計しました。あわせて、アプローチリストの精査とPDCAを継続的に回す体制を構築しました。
その結果、有効ターゲットの特定が進み、アプローチ精度が向上。月間アポイント数は最大30件超、約8倍まで増加する成果につながっています。
このようにABMでは、単にリードを増やすのではなく、ターゲット企業の選定とアプローチ戦略を最適化することで、営業活動の効率と成果の両方を高めることが可能になります。また、ターゲットリストの継続的な見直しと改善サイクルを回すことで、再現性のある営業プロセスを構築できる点も大きな特徴です。
ABMを実行する体制の作り方:内製と外部支援
ABMを成功させるためには、施策の内容だけでなく「どのような体制で運用するか」が非常に重要です。ターゲット企業の選定、コンテンツ設計、営業との連携など、多くのプロセスが関わるため、適切な体制が構築されていなければ成果は安定しません。ここでは、ABMを実行する体制について、内製と外部支援それぞれの特徴を整理します。
ABM運用を内製する場合のメリットとデメリット
ABMを内製する最大のメリットは、自社の営業戦略や顧客理解をそのまま施策に反映できる点にあります。これまで蓄積してきた顧客データや営業現場の知見を活用することで、ターゲット企業の精度や提案内容の具体性を高めやすくなります。また、営業部門との距離が近いため、情報共有がスムーズに行える点も強みです。ターゲット企業の反応や商談の状況をリアルタイムで把握し、施策の改善に反映できるため、PDCAを高速で回すことが可能になります。
一方で、内製には運用負荷の高さという課題があります。ターゲット企業のリサーチやコンテンツ設計、インサイドセールスとの連携など、多くの業務を自社で担う必要があり、人的リソースやノウハウが不足している場合は負担が大きくなります。特にABMの経験がない場合、ターゲット設計やKPI設計でつまずくケースも多く、施策の方向性が定まらないまま運用が進んでしまうリスクもあります。そのため、内製で進める場合は段階的に体制を整備しながら進めることが重要です。
ABM運用を外部に依頼するメリットとデメリット
外部パートナーにABM運用を依頼することで、専門的なノウハウを活用しながら短期間で施策を立ち上げることが可能になります。特にターゲット企業の分析や戦略設計、コンテンツ設計といった高度な領域については、経験豊富なパートナーの支援を受けることで、施策の精度を高めることができます。また、リソース不足の解消という観点でも有効です。自社で対応しきれないリサーチ業務や施策運用を外部に委託することで、営業活動に集中できる環境を整えることができます。
一方で、外部に依頼する場合は、自社の営業戦略や顧客理解が十分に共有されていなければ、施策の精度が低下するリスクがあります。特にABMは企業ごとの深い理解が求められるため、情報共有が不十分だと表面的な施策にとどまってしまう可能性があります。そのため、外部パートナーと連携する際には、役割分担やコミュニケーション設計を明確にし、継続的に情報共有を行う体制を構築することが重要です。
戦略設計からBDR運用まで支援する「マーケティングコミット」
ABMを効果的に実行するためには、戦略設計だけでなく、その後の運用まで一貫して設計することが重要です。ターゲット企業の選定、アプローチ戦略の設計、インサイドセールスによる接点創出、そして商談創出までのプロセスを統合的に設計する必要があります。
「マーケティングコミット」では、こうしたABMの全体設計から実行支援までを一貫してサポートしています。ターゲット企業の選定や戦略設計を支援するだけでなく、インサイドセールス(BDR)による具体的なアプローチまで対応することで、実行可能な施策として落とし込むことが可能です。
また、営業とマーケティングの連携体制の構築や、KPI設計・改善サイクルの運用まで支援することで、単発の施策ではなく継続的に成果を生み出す仕組みを構築できます。ABMに取り組みたいが体制構築や運用に課題を感じている場合は、専門パートナーの活用も有効な選択肢として検討してみてください。
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ABMに関するよくある質問
ABMは比較的新しい概念として広がっているため、導入を検討する企業から多くの疑問が寄せられます。ここでは、実務上よくある質問について整理し、ABMの理解をより深めていきます。
ABMとリードジェネレーションの違いは?
ABMとリードジェネレーションの最大の違いは「ターゲット設定の順序」にあります。リードジェネレーションは、広告やコンテンツを活用して広く見込み顧客を集め、その中から有望なリードを選別する手法です。一方でABMは、最初にターゲット企業を定義し、その企業に対して集中的にアプローチを行います。この違いにより、評価指標も大きく異なります。リードジェネレーションではリード数やCV数が重視されるのに対し、ABMでは商談数や受注率、パイプラインといった売上に直結する指標が中心となります。また、ABMは営業とマーケティングの連携を前提とした戦略であり、単なるリード獲得施策ではなく「受注までのプロセス全体を最適化する考え方」である点も重要な違いです。
ABMはどの企業規模でも実施できる?
ABMは基本的にどの企業でも実施可能ですが、特に効果を発揮しやすいのは「ターゲット企業が明確で、1社あたりの受注価値が高いビジネス」です。例えば、SaaS、ITサービス、コンサルティング、製造業などのBtoBビジネスでは、意思決定に複数の関係者が関与するため、企業単位でアプローチを行うABMとの相性が非常に高いといえます。一方で、低単価で広く顧客を獲得するモデルや、個人向け(BtoC)ビジネスでは、ABMよりもリードジェネレーション型の施策の方が適している場合もあります。そのため、自社のビジネスモデルや営業プロセスを踏まえたうえで、ABMを導入すべきかを判断することが重要です。
ABMにツールは必須?
ABMの実行においてツールは必須ではありませんが、活用することで施策の精度と効率を大きく高めることができます。特にマーケティングオートメーション(MA)や営業支援ツール(SFA)を活用することで、ターゲット企業の行動履歴や商談状況を一元管理できるようになります。これにより、関心度の高いタイミングでのアプローチや、データに基づいた施策改善が可能になります。また、広告配信ツールやデータ基盤と連携することで、企業単位での接触状況を可視化し、より精度の高いABM運用を実現できます。ただし、ツールを導入するだけでは成果にはつながらず、あくまで戦略設計と運用体制が前提となる点には注意が必要です。
まとめ
ABM(アカウントベースドマーケティング)は、ターゲット企業を起点に営業とマーケティングが連携し、「受注確度の高い顧客」にリソースを集中させる戦略です。意思決定者が複数存在するBtoB領域において、企業単位で深い関係を築くABMは、商談化率や受注率を劇的に向上させる有効な手段となります。成功のためには「ターゲットの再定義」「組織間の連携」「個別最適化の実行」が欠かせません。これらを「仕組み」として定着させることで、単なるリード獲得を超えた、売上に直結するマーケティング活動が実現します。
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