ABMとは?メリット・導入手順や成功させるポイントをわかりやすく解説
ABMとは、特定の企業を対象に営業とマーケティングが連携してアプローチするBtoBマーケティング戦略です。従来のリード獲得型の手法とは異なり、受注につながる企業にリソースを集中することで、商談化率や受注率の向上を目指します。
本記事では、ABMの基本的な考え方から具体的な戦略設計、実践方法までを体系的に解説します。見込み顧客を広く集めるだけでは成果につながりにくい現在のBtoB環境において、なぜABMが有効なのか、その理由と実務に落とし込むポイントまで整理します。
ABM(アカウントベースドマーケティング)とは

ABM(Account Based Marketing)とは、特定の企業を対象に営業とマーケティングが連携してアプローチするBtoBマーケティング戦略です。従来のように幅広く見込み顧客を集めるのではなく、あらかじめ重要顧客となり得る企業を特定し、対象企業に最適化されした施策を設計・実行する点に特徴があります。
BtoB商材は意思決定に複数の関係者が関わるため、企業単位で戦略を組み立てる発想が成果につながりやすくなっています。まずはABMの定義や目的、近い概念との違いを見ていきましょう。
ABMの定義・目的
ABMは「Account Based Marketing」の略称で企業単位でマーケティング活動を行う戦略です。従来のリードベースの考え方では、個人単位の興味関心を起点にアプローチを行っていましたが、BtoBにおいては最終的な意思決定は企業単位で行われます。そのため、個人単位の最適化だけでは受注にはつながりにくいという構造的な課題があります。
ABMでは、まず対象となる企業を定義したうえで、対象企業に属する複数の意思決定関係者へ段階的にアプローチを行います。たとえば、現場担当者には業務効率化のメリットを、管理職には組織改善の効果を、経営層には投資対効果を訴求するなど、それぞれの役割に応じた情報提供を設計します。
また、ABMでは営業とマーケティングの分断を解消し、同一のターゲット企業に対して連携して施策を実行します。マーケティングが関心を醸成し、営業が具体提案へとつなげることで、無駄のない商談創出プロセスを構築することが可能になります。
目的は、受注確度の高い企業へリソースを集中させ、商談化率や受注率を高めることにあります。
リードベースドマーケティングとの違い
従来のリード型マーケティングは、広告やコンテンツを活用して幅広く見込み顧客を集め、その中から有望なリードを選別して営業へ引き渡す手法です。短期間で母数を増やすことには適していますが、受注確度の低いリードも多く含まれるため、営業効率の低下を招くリスクがあります。
一方、ABMでは最初に対象企業を明確に定義し、その企業に対して集中的にアプローチを行います。営業活動の無駄を削減し、限られたリソースを最大限活用することができる点が特徴です。また、マーケティング施策もターゲット企業に最適化されるため、メッセージの精度が高まり、商談化の確率も向上します。
さらに、評価指標も大きく異なります。リード型ではリード数やコンバージョン数が重視されるのに対し、ABMでは商談数や受注率、パイプラインといった売上に直結する指標が中心です。この違いにより、マーケティングの役割そのものがより事業成果に近づくことになります。
| 項目 | リード型マーケティング | ABM |
|---|---|---|
| ターゲット設定 | 広く見込み顧客を集客 | 事前に企業を特定 |
| アプローチ方法 | マス向け施策中心 | 企業ごとに最適化 |
| 主体 | マーケティング中心 | 営業とマーケの連携 |
| KPI | リード数 | 商談・受注・売上 |
このように、ABMは「誰に売るか」を起点に設計される戦略であり、従来のマーケティングとは根本的な思想が異なります。
デマンドジェネレーションとの違い
デマンドジェネレーション(Demand Generation)とは、見込み顧客の需要を掘り起こし、商談化までの一連の活動を指すマーケティング手法です。リード獲得から育成、営業への引き渡しまで幅広い施策を含み、対象を絞り込まずに需要を生み出す発想が土台にあります。
ABMは、狙う企業をあらかじめ定義したうえで施策を組み立てるため、需要創出の範囲を広く取るデマンドジェネレーションとは、起点となる考え方が異なります。ただし、ABMでもコンテンツ配信やウェビナーなど需要を高める施策自体はデマンドジェネレーションと重なる部分があり、双方を組み合わせて運用するケースも一般的です。
ABMが注目されている理由
ABMが注目されている背景には、BtoBマーケティングを取り巻く環境の変化があります。
リード獲得のハードルが下がった一方で、商談や受注につながる質の高いリードの割合は下がる傾向にあり、営業活動の非効率化が課題となっています。加えて、意思決定に関わる人数の増加やデータ活用環境の整備も、ABMという考え方を後押しする要因です。ここでは、ABMが注目されている代表的な理由を3つ紹介します。
BtoBの意思決定プロセスが複雑化している
BtoB商材は、購入までの意思決定に複数の関係者が関わるケースが一般的です。現場担当者だけでなく、管理職や決裁権を持つ経営層まで、それぞれ異なる立場から検討に加わるため、単一のリードだけでは受注に至りにくくなっています。特に高単価商材やエンタープライズ向けサービスでは、検討期間も長期化しやすく、関係者の数もさらに増える傾向にあります。
こうした状況では、企業単位で関係構築を進め、複数の意思決定者へ段階的にアプローチする発想が有効です。ABMは、意思決定プロセスの複雑化という構造的な変化に適した戦略として広がっています。
顧客データを活用できる環境が整ってきた
近年は、マーケティングオートメーション(MA)や営業支援(SFA)ツールがSaaSとして普及し、API連携によって複数システム間のデータを統合しやすくなりました。Web上の行動履歴と商談・受注情報を企業単位で一元管理できる環境が整いつつあります。
データが蓄積・連携できるようになったことで、対象企業の関心度や検討フェーズを可視化し、タイミングを見極めたアプローチが可能になりました。こうした技術基盤の進化は、ABMを実務として運用できる大きな要因のひとつです。
営業・マーケティングの効率化が求められている
デジタル施策の普及によってリード獲得自体は容易になった一方、獲得したリードの質にはばらつきが生じやすくなりました。営業部門が優先度の低いリード対応に時間を割かれ、本来注力すべき対象企業へのアプローチが後回しになる状況も珍しくありません。
高単価商材ほど、すべての見込み顧客に同じリソースを投下するより、受注確度の高い企業へ集中したほうが投資対効果は高まります。限られた営業・マーケティングのリソースをいかに効率よく配分するかという課題に対して、ABMは実践的な解決策のひとつとして位置づけられています。
【動画で解説!】ABM戦略とは?基礎からわかるアカウントベースドマーケティング入門
ABMについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
「大手企業を狙い撃ちしたいが、具体的なやり方がわからない」そんな悩みを持つ経営者・営業責任者の方へ、B2Bマーケティングの専門家が徹底解説!ABM戦略の基礎知識やメリット、具体的な成功事例まで、現場のリアルな視点でお伝えします。
ABMのメリットとデメリット
ABMは、特定の企業に対してリソースを集中させることで成果を最大化する戦略ですが、その分、設計や運用の難易度も高くなります。従来のリード獲得型マーケティングとは異なり「誰にアプローチするか」を起点にすべての施策を設計する必要があるため、メリットだけでなくデメリットも正しく理解したうえで導入を検討することが重要です。ここでは、ABMのメリットとデメリットを整理し、それぞれが実務にどのような影響を与えるのかを解説します。
ABMのメリット
ABMは、受注確度の高い企業に絞ってアプローチできる点が特徴で、営業効率や成果の質を高めやすい手法です。特に高単価商材やエンタープライズ向けの営業において、大きな効果を発揮します。
受注確度の高い企業にリソースを集中できる
ABMの最大のメリットは、受注につながる可能性が高い企業に対してリソースを集中できる点にあります。従来のリード型マーケティングでは、幅広く見込み顧客を集めたうえで有望な顧客を選別する必要がありましたが、ABMでは最初からターゲット企業を定めるため、無駄なアプローチを削減できます。特に高単価商材やエンタープライズ向けのサービスでは、限られたリソースを集中させることで営業効率の向上が期待できます。
ABMでは、営業とマーケティングが同じターゲット企業を追うため、部門間の連携が強化されます。従来のように「マーケはリード数」「営業は受注」といった分断構造ではなく、共通の目標に基づいて動くことで、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
ターゲット企業ごとに最適化された提案ができる点も大きなメリットです。業界やビジネスモデル、課題を深く理解したうえでアプローチすることで「自社に最適な提案」として認識されやすくなります。結果として商談の質が向上し、アップセルやクロスセルを含めたLTVの向上にも寄与します。 投下したリソースに対して得られる成果も大きくなりやすく、ROIの改善が期待できます。
ABMのデメリット
一方で、ABMはターゲット企業を絞り込む分、設計や運用における負荷が高くなりやすい手法でもあります。導入にあたっては、体制やリソースを踏まえた設計が重要です。
ターゲット選定・リサーチに工数がかかる
ABMでは、精度の高いターゲット企業の選定が成果を大きく左右します。そのため、過去の受注データの分析や市場調査、業界構造の理解など、事前のリサーチに多くの工数が必要になります。特に「どの企業が受注につながりやすいか」を見極めるには、単なる属性情報だけでなく、導入背景や意思決定プロセスまで踏み込んだ分析が求められます。初期設計の精度が低いと、その後の施策全体の効率が下がってしまう点にも注意が必要です。
成果が出るまで時間がかかる
ABMは関係構築を前提とした戦略のため、リード獲得型の施策と比べて成果が出るまでに時間がかかりやすい傾向があります。特にエンタープライズ領域では、意思決定プロセスが長期化しやすく、すぐに受注へつながるケースは多くありません。
短期的な数値だけで評価してしまうと、施策本来の価値を見誤るおそれがあります。中長期の視点で評価軸を設計し、段階的な成果を追っていく姿勢が求められます。
営業・マーケティングの連携体制が必要になる
ABMは営業とマーケティングの連携を前提とした手法であるため、部門間の認識が揃っていない場合は効果を発揮しづらくなります。ターゲット対象企業やKPIの定義がズレていると、それぞれが別の方向に施策を進めてしまい、結果として非効率な運用になってしまいます。共通KPIの設計や定期的な情報共有の仕組みがない場合、リード獲得や商談化のプロセスが分断され、ABMの強みである一貫したアプローチが実現できません。
ABMが向いている企業
ABMはすべての企業に適したマーケティング手法ではなく、商材特性や営業体制によって成果の出やすさが大きく変わります。そのため、導入を検討する際には「自社がABMに適しているか」を見極めることが重要です。
顧客単価・LTVが高い企業
ABMは「特定の企業にリソースを集中する戦略」であるため、広く見込み顧客を集めることで成果が出るビジネスモデルとは相性がよくありません。一方で、対象企業を明確に定義できる企業や、1社あたりの受注価値が高いビジネスでは大きな効果を発揮します。
単価が高いほど、1件の受注が売上に与えるインパクトが大きくなります。そのため、広くリードを集めるよりも、受注確度の高い企業に対して深くアプローチする方が効率的です。
さらに、SaaS、ITサービス、コンサルティング、製造業の大型案件などは、意思決定プロセスが長く関係者も多いため、ABMとの親和性が高い領域といえます。企業ごとの課題に合わせた提案を行うことで、競合との差別化もしやすくなります。
ターゲット企業を明確に定義できる企業
次に、ターゲット企業が明確に定義できる企業もABMに向いています。たとえば、特定の業界に強みを持っている場合や、一定の企業規模・課題を持つ企業に対して高い提供価値を発揮できる場合です。
過去の受注データを分析すると「受注につながりやすい企業の共通点」が見えてきます。業界、企業規模、売上規模、導入背景などを整理することで、自社にとっての優良顧客像を定義することができます。このようにターゲットが明確であればあるほど、ABMの精度は高まり、成果につながりやすくなります。
営業とマーケティングが連携できる企業
営業とマーケティングの連携体制が整っている企業も重要な条件となります。ABMは両部門が同じターゲット企業を追い、役割を分担しながら進めることが前提となるため、部門間の連携が機能していなければ成果は出づらくなります。
マーケティングが対象企業に対して認知や関心を高め、インサイドセールスが接点を作り、フィールドセールスが提案を行うといった一連の流れが設計されているかが重要です。また、共通KPIが設定されていない場合、各部門が異なる指標を追ってしまい、ABMの効果が分散してしまうため注意が必要です。
エンタープライズ企業・重要顧客を攻略したい企業
エンタープライズ企業や重要顧客の攻略を目的としている場合にも、ABMは有効な戦略です。これらの企業は意思決定に関与する人数が多く、導入までのプロセスも複雑で長期化しやすいため、個人単位のアプローチでは十分に対応できません。ABMでは、企業単位で関係構築を行い、複数の意思決定者に対して段階的にアプローチすることができます。初期段階では課題認識を促し、中盤では具体的な解決策を提示し、最終段階では投資判断を支援する情報を提供するなど、プロセス全体を設計できる点が強みです。
このように、ABMが向いている企業は「誰に売るか」が明確であり、かつその企業に対して深い価値提供ができる企業です。単にリード数を増やすことを目的とするのではなく、受注につながる企業との関係構築を重視する場合において、ABMは非常に有効な戦略となります。
ABMの導入手順
ABMを成功させるには、対象企業を定義するだけでは不十分です。目的の設定からアプローチ戦略の設計、実行後の効果測定まで一連の流れを設計する必要があります。
STEP1.目的・ゴールを明確にする
ABMに取り組む前に、まず何を実現したいのかを明確にしておくことが重要です。「新規の大型商談を増やしたい」のか「既存顧客のLTVを高めたい」のかによって、選ぶべき対象企業もアプローチ方法も変わってきます。
目的が曖昧なまま進めてしまうと、対象企業の選定基準がぶれたり、営業とマーケティングで目指す方向がずれたりする原因になります。売上目標や商談化率など、具体的な数値目標もあわせて設定しておくと、後の効果測定がしやすくなるでしょう。
STEP2.ターゲットアカウントを選定する
目的が固まったら、次はアプローチする対象企業を選びます。ここがABM全体の精度を左右する、最も重要な工程です。ターゲット設計の精度が低いと、その後の施策がどれだけ優れていても成果にはつながりにくくなります。
まずは過去の売上データや受注実績をもとに、自社にとって受注につながりやすい企業の特徴を洗い出しましょう。業界、企業規模、売上規模、導入背景、抱えている課題などを分析することで、優良顧客に共通する傾向が見えてきます。マーケティング視点だけで選ぶと現場の感覚とずれが生まれやすいため、営業部門の知見も取り入れながら、実際にアプローチすべき企業をリスト化していくことが大切です。
対象企業の数を広げすぎないように注意しましょう。ABMはリソースを集中させる戦略のため、最初は絞り込んだ状態で運用し、成果を見ながら段階的に広げるほうが効果的です。
課題の顕在度も、優先順位を判断する材料になります。すでに類似ツールを導入している企業や、業界的に変革が求められている企業は、比較的ニーズが表面化している傾向があります。競合製品の利用状況もあわせて確認することで、より実務的な優先順位づけが可能になるでしょう。
STEP3.企業・キーパーソンをリサーチする
対象企業が決まったら、企業単位の情報だけでなく、意思決定に関わる人物についても詳しく調べていきます。同じ企業であっても、役職やミッション、抱えている課題によって響くアプローチは大きく異なるためです。
例えば、マーケティング責任者であればリード獲得やKPI達成への関心が高く、現場担当者であれば業務効率や運用負荷の軽減に関心を持ちやすい傾向があります。情報収集の方法や意思決定への関わり方も役職によって異なるため、役職・職種・課題・情報収集行動といった観点で整理しておくと、後のアプローチ設計に活かしやすくなります。
企業属性と人物属性の両方を掛け合わせて整理することで、より精度の高いABM施策を組み立てられるようになります。
STEP4.アカウントごとのアプローチ戦略を設計する
企業とキーパーソンの情報が整理できたら、対象企業との関係性の深さに応じてアプローチ戦略を設計します。関係性は一律ではなく、段階に応じて接し方を変えていく発想が重要です。
| 関係性の段階 | 状態 | アプローチの主な施策 |
|---|---|---|
| 接点創出フェーズ | 企業の基本属性のみ把握 | 展示会・Web広告・外部データベースの活用 |
| 関係構築・仮説検証フェーズ | 担当者情報や一部の接点あり | SNSでのつながり・個別メール・電話ヒアリング |
| ナーチャリングフェーズ | 個人情報を取得済み(未商談) | 課題に即したメール配信・限定コンテンツの提供 |
| 商談化・受注フェーズ | 関係性が構築済み | 個別提案書の作成・クローズドな勉強会・対面やWeb商談 |
対象企業の情報がどこまで蓄積されているかによって、次に取るべきアクションが変わります。目先のアポイント獲得だけを急ぐのではなく、情報の解像度に合わせて段階的に関係を深めていく設計が、最終的な受注率の向上につながります。
STEP5.コンテンツ・メッセージを設計する
アプローチ戦略が固まったら、対象企業や業界に合わせたコンテンツを用意していきます。汎用的な内容ではなく、その企業にとって価値のある情報を届けることで、関心度を高めやすくなります。業界特有の課題に焦点を当てたホワイトペーパーや、類似企業の成功事例、導入効果を具体的に示した資料などが代表例です。
コンテンツは検討フェーズに応じて使い分ける発想も欠かせません。初期段階では課題認識を促す情報、中盤では具体的な解決策の提示、最終段階では導入効果や実績の提示というように、段階ごとに適した内容を設計します。誰に対してどのタイミングで届けるかまで組み立てておくことで、コンテンツの効果を高められます。
STEP6.複数チャネルでアプローチする
コンテンツが用意できたら、単一のチャネルに頼らず、複数のチャネルを組み合わせて対象企業との接点を増やしていきます。メール、SNS、広告、インサイドセールスなどを連携させることで、関係性を段階的に深めやすくなるでしょう。
例えば、広告で認知を獲得し、コンテンツで関心を高め、そのあとインサイドセールスで直接接触するという流れを設計すれば、一貫した顧客体験を提供できます。接点は一度きりで終わらせず、定期的な情報提供やフォローアップを継続することで、企業内での認知が広がり、複数の意思決定関係者へのアプローチにもつながっていきます。
STEP7.効果測定・改善を行う
施策を実行したら、対象企業ごとの反応を確認し、次のアクションに反映させましょう。接触数や商談化率、受注率といった指標を定期的に確認し、想定どおりに進んでいない部分があれば、対象企業の選定基準やアプローチ方法を見直します。
ABMは一度の施策で完結するものではなく、企業ごとの反応を見ながら継続的に精度を高めていく戦略であることを意識しましょう。
ABMで成果を出すためのポイント
ABMは導入するだけで成果が出る施策ではなく、運用を重ねながら精度を高めていく取り組みです。ターゲット選定から情報共有、コンテンツ設計、データ管理、KPI運用まで、複数の要素が噛み合って初めて受注につながります。ここでは、ABMで成果を出すために押さえておきたいポイントを5つ紹介します。
ターゲットアカウントの選定精度を高める
ABMの成果は、ターゲットアカウントの選定精度に大きく左右されます。過去の受注データを定期的に見直し、受注につながりやすい企業の特徴を最新の状態に更新しておくことが大切です。
市場環境や自社の商品ラインナップが変化すれば、優良顧客の傾向も変わります。営業現場からのフィードバックを取り入れながら、選定基準を継続的に磨いていく姿勢が求められます。
営業とマーケティングで目標・顧客情報を共有する
営業とマーケティングが同じ数値目標を持ち、顧客情報を共有できる状態をつくることも欠かせません。部門ごとに異なるKPIを追ってしまうと、アプローチの方向性がずれ、対象企業への対応にばらつきが生まれます。
定例ミーティングや共有ツールを通じて、対象企業の検討状況や商談内容をリアルタイムで把握できる仕組みを整えておくと、部門間の連携がスムーズになります。
アカウントごとにアプローチをパーソナライズする
汎用的なメッセージを一律で送るのではなく、企業ごとの課題や検討フェーズに合わせて内容を調整することも重要です。同じ業界であっても、企業規模や導入背景によって響く訴求点は変わります。
担当者の役職やミッションを踏まえた提案資料を用意するなど、企業単位での作り込みを意識すると、商談化につながりやすくなります。
顧客データを継続的に蓄積・更新する
顧客データは、一度整理して終わりにするのではなく、日々のやり取りの中で継続的に蓄積・更新していく必要があります。商談内容や問い合わせ履歴、Webサイト上の行動データなどを一元管理できる環境を整えることで、対象企業の関心度や検討フェーズを正確に把握できます。
データが古いまま放置されると、アプローチのタイミングを見誤る原因になるため、更新のルールをあらかじめ決めておくと安心です。
KPIを設定して継続的に改善する
ABMの効果を正しく評価するには、接触数や商談化率、受注率といったKPIを設定し、定期的に振り返る仕組みが必要です。
数値が想定を下回った場合は、ターゲット選定・アプローチ方法・コンテンツ内容のどこに課題があるかを切り分けて確認します。小さな改善を積み重ねながら運用を続けることで、ABM全体の精度は着実に高まっていきます。
ABMに活用できる主なツール
ABMは、企業ごとの状況を把握しながら段階的にアプローチを進める性質上、情報の一元管理や自動化を助けるツールとの相性が良い施策です。ツールの導入は必須ではありませんが、活用することで運用の精度と効率を大きく高められます。ここでは、ABMを進めるうえで代表的な4種類のツールを紹介します。
ABMツール・企業データベース
ABM専用のツールは、対象企業の選定からアプローチの進捗管理までを一元的に支援してくれます。企業の属性情報や技術導入状況、資金調達の動向などをデータベースとして提供するサービスもあり、ターゲット企業のリサーチにかかる工数を減らせます。
また、Webサイトへの訪問企業を特定できる機能を備えたツールを使えば、対象企業がどのタイミングで関心を高めているかを把握しやすくなります。営業とマーケティングの双方が同じデータを見ながら動ける環境を整えられる点も、ABMツールを導入するメリットのひとつです。
MA
MA(Marketing Automation)ツールは、リードのWebサイト上での行動履歴やメールの開封状況などを可視化できるツールです。対象企業の担当者がどのコンテンツに関心を示しているかを追跡できるため、購買意欲の高まりを捉えたタイミングでのアプローチにつなげやすくなります。
ABMにおいては、企業単位で行動データを集約できるかどうかが重要なポイントです。個人単位の履歴だけでなく、同じ企業に属する複数の担当者の動きをまとめて把握できると、アカウント全体の検討状況が見えやすくなります。
CRM
CRM(Customer Relationship Management)ツールは、顧客情報を一元管理し、顧客との関係性を深めるためのツールです。過去のやり取りや商談履歴、問い合わせ内容などを蓄積しておくことで、対応の質を継続的に高められます。
ABMでは、対象企業に関する情報が営業・マーケティング双方から集まってくるため、CRMを軸に情報を集約しておくと、部門をまたいだ連携がスムーズになります。担当者が変わった場合の引き継ぎもしやすくなる点も、実務上のメリットです。
SFA
SFA(Sales Force Automation)ツールは、営業活動の進捗や商談状況、予実管理などを可視化するためのツールです。対象企業ごとの商談フェーズや次のアクションを可視化できるため、ABMのように企業単位で進捗を追う運用と相性が良いです。
MAやCRMと連携させることで、マーケティング施策の反応から商談化、受注までの一連の流れを企業単位で追跡できるようになります。インサイドセールスとフィールドセールスの間での情報共有もスムーズになり、対応の質の向上にもつながります。
ABMのKPIと成果測定
ABMでは、従来のリード数中心のKPIではなく「対象企業単位」で成果を評価することが重要です。単に接触数や資料ダウンロード数を追うのではなく、最終的な受注につながるプロセス全体を可視化し、各フェーズでの改善を行う必要があります。ここでは、ABM施策の主なKPI指標を4つ紹介します。
ターゲット企業への接触数
ターゲット企業への接触数は、ABMにおける最も基本的な指標のひとつです。設定した対象企業のうち何社と接点を持てているかを把握することで、施策の実行量を可視化できます。ABMでは対象企業を限定しているため、単純なリード数ではなく「ターゲット企業のうち何社に接触できているか」が重要になります。
例えば、対象企業100社のうち何社と接点を持てているかを継続的に確認することで、アプローチの網羅性を判断できます。
エンゲージメント
接触数に加えて、接触の質を示すエンゲージメントの確認も欠かせません。広告への反応やサイト訪問だけでなく、コンテンツの閲覧、資料のダウンロード、ウェビナーやイベントへの参加、インサイドセールスとのやり取りなど、複数の接点がどの程度積み上がっているかを見ていきます。
エンゲージメントが高まっている企業ほど、検討フェーズが進んでいる可能性が高く、営業への引き渡しタイミングを見極める材料になります。接触数だけでは分からない関係性の深まりを捉えるためにも、あわせて確認しておきたい指標です。
商談化率
商談化率は、対象企業との接触がどれだけ商談につながっているかを示す指標です。ABMにおいては特に重要で、施策の質を評価する中心的な役割を果たします。接触数が多くても商談につながらない場合、ターゲット設定やメッセージ設計、アプローチ方法のいずれかに課題がある可能性があります。一方で、接触数が少なくても商談化率が高い場合は、ターゲット精度や施策の方向性が適切であると判断できます。
さらに、チャネル別に商談化率を分析することで、どの施策が商談創出に寄与しているかを把握できます。例えば以下のように分解して分析します。
- ウェビナー経由
- インサイドセールス経由
- 広告接触経由
これにより、どの施策にリソースを集中すべきかを判断できるようになります。
受注率・LTV
受注率とLTV(顧客生涯価値)は、ABMの最終的な成果を評価する指標です。どれだけの商談が受注につながっているか、また1社あたりの売上がどの程度拡大しているかを確認することで、投資対効果を判断できます。ABMでは企業単位で関係構築を行うため、単発の受注だけでなく、継続的な取引やアップセル・クロスセルの可能性も重要になります。そのため、LTVの観点で評価することで、より正確に成果を測定できます。
受注率が低い場合は、商談の質や提案内容、意思決定者へのアプローチに課題がある可能性があります。接触から受注までの各プロセスを一貫して見直し、ボトルネックを特定して改善していくことが重要です。
ABMの成功事例
ABMは理論だけでなく、実際の運用においても成果につながっている事例が多く存在します。特に対象企業の選定精度や営業とマーケティングの連携体制を見直すことで、商談化率や受注率の改善につながるケースが多く見られます。
人材・HR領域において、ナショナル企業向けのRPO商材を扱っていたある企業では、従来の営業手法では大手企業へのアプローチが十分に機能していないという課題がありました。
ABMの考え方をもとにターゲット企業を精査し、大手企業に絞った約500社のリストを構築しました。インサイドセールス(BDR)による戦略的なアプローチへ転換した結果、受注率は20%超を達成し、そのうち1社では受注額1,500万円を超える高単価案件の創出にも成功しています。
このようにABMでは、対象企業を絞り込んだうえで戦略的にアプローチを行うことで、大手企業への営業成果を最大化することが可能です。特に高単価商材においては、リード数の最大化ではなく、狙うべき企業への深いアプローチが受注に直結する重要な要素となります。
ABMを実行する体制の作り方
ABMを成功させるためには、施策の内容だけでなく「どのような体制で運用するか」が非常に重要です。ターゲット企業の選定、コンテンツ設計、営業との連携など、多くのプロセスが関わるため、適切な体制が構築されていなければ成果は安定しません。ここでは、ABMを実行する体制について、内製と外部支援それぞれの特徴を整理します。
ABMを内製する場合
ABMを内製する最大のメリットは、自社の営業戦略や顧客理解をそのまま施策に反映できる点にあります。これまで蓄積してきた顧客データや営業現場の知見を活用することで、対象企業の精度や提案内容の具体性を高めやすくなります。
また、営業部門との距離が近いため、情報共有がスムーズに行える点も強みです。ターゲット企業の反応や商談の状況をリアルタイムで把握し、施策の改善に反映できるため、PDCAを高速で回すことが可能です。
一方で、内製には運用負荷の高さという課題があります。ターゲット企業のリサーチやコンテンツ設計、インサイドセールスとの連携など、多くの業務を自社で担う必要があり、人的リソースやノウハウが不足している場合は負担が大きくなります。
特にABMの経験がない場合、ターゲット設計やKPI設計でつまずくケースも多く、施策の方向性が定まらないまま運用が進んでしまうリスクもあるため、注意が必要です。内製で進める場合は段階的に体制を整備しながら進めることが重要です。
外部支援を活用する場合
外部パートナーにABM運用を依頼することで、専門的なノウハウを活用しながら短期間で施策を立ち上げることが可能になります。特にターゲット企業の分析や戦略設計、コンテンツ設計といった高度な領域については、経験豊富なパートナーの支援を受けることで、施策の精度を高めることができます。
また、リソース不足の解消という観点でも有効です。自社で対応しきれないリサーチ業務や施策運用を外部に委託することで、営業活動に集中できる環境を整えられるでしょう。
一方で、外部に依頼する場合は、自社の営業戦略や顧客理解が十分に共有されていなければ、施策の精度が低下するリスクがあります。特にABMは企業ごとの深い理解が求められるため、情報共有が不十分だと表面的な施策にとどまってしまう可能性があります。そのため、外部パートナーと連携する際には、役割分担やコミュニケーション設計を明確にし、継続的に情報共有を行う体制を構築することが重要です。
戦略設計からBDR運用まで支援する「マーケティングコミット」
ABMを効果的に実行するためには、戦略設計だけでなく、その後の運用まで一貫して設計することが重要です。ターゲット企業の選定、アプローチ戦略の設計、インサイドセールスによる接点創出、そして商談創出までのプロセスを統合的に設計する必要があります。
「マーケティングコミット」では、こうしたABMの全体設計から実行支援までを一貫してサポートしています。ターゲット企業の選定や戦略設計を支援するだけでなく、インサイドセールス(BDR)による具体的なアプローチまで対応することで、実行可能な施策として落とし込むことが可能です。

また、営業とマーケティングの連携体制の構築や、KPI設計・改善サイクルの運用まで支援することで、単発の施策ではなく継続的に成果を生み出す仕組みを構築できます。ABMに取り組みたいが体制構築や運用に課題を感じている場合は、専門パートナーの活用も有効な選択肢として検討してみてください。
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ABMに関するよくある質問
ABMは比較的新しい概念として広がっているため、導入を検討する企業から多くの疑問が寄せられます。ここでは、実務上よくある質問について整理し、ABMの理解をより深めていきます。
ABMとリードジェネレーションの違いは?
ABMとリードジェネレーションの最大の違いは「ターゲット設定の順序」にあります。
リードジェネレーションは、広告やコンテンツを活用して広く見込み顧客を集め、その中から有望なリードを選別する手法です。一方でABMは、最初にターゲット企業を定義し、その企業に対して集中的にアプローチを行います。
リードジェネレーションではリード数やCV数が重視されるのに対し、ABMでは商談数や受注率、パイプラインといった売上に直結する指標が中心となります。また、ABMは営業とマーケティングの連携を前提とした戦略であり、単なるリード獲得施策ではなく「受注までのプロセス全体を最適化する考え方」である点も重要な違いです。
ABMはどの企業規模でも実施できる?
ABMは基本的にどの企業でも実施可能ですが、特に効果を発揮しやすいのは「ターゲット企業が明確で、1社あたりの受注価値が高いビジネス」です。
例えば、SaaS、ITサービス、コンサルティング、製造業などのBtoBビジネスでは、意思決定に複数の関係者が関与するため、企業単位でアプローチを行うABMとの相性が非常に高いといえます。
一方で、低単価で広く顧客を獲得するモデルや、個人向け(BtoC)ビジネスでは、ABMよりもリードジェネレーション型の施策の方が適している場合もあります。そのため、自社のビジネスモデルや営業プロセスを踏まえたうえで、ABMを導入すべきかを判断することが重要です。
ABMにツールは必須?
ABMの実行においてツールは必須ではありませんが、活用することで施策の精度と効率を大きく高めることができます。
特にマーケティングオートメーション(MA)や営業支援ツール(SFA)を活用することで、ターゲット企業の行動履歴や商談状況を一元管理できるようになります。これにより、関心度の高いタイミングでのアプローチや、データに基づいた施策改善が可能になります。
また、広告配信ツールやデータ基盤と連携することで、企業単位での接触状況を可視化し、より精度の高いABM運用を実現できます。ただし、ツールを導入するだけでは成果にはつながらず、あくまで戦略設計と運用体制が前提となる点には注意が必要です。
まとめ
ABM(アカウントベースドマーケティング)は、ターゲット企業を起点に営業とマーケティングが連携し、「受注確度の高い顧客」にリソースを集中させる戦略です。意思決定者が複数存在するBtoB領域において、企業単位で深い関係を築くABMは、商談化率や受注率を劇的に向上させる有効な手段となります。成功のためには「ターゲットの再定義」「組織間の連携」「個別最適化の実行」が欠かせません。これらを「仕組み」として定着させることで、単なるリード獲得を超えた、売上に直結するマーケティング活動が実現します。
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